今年10月で、チェ・ゲバラがボリビアで殺害されてから40年目を迎える。1967年以降の40年間で、世界は、いくつかの政治・社会・経済・科学技術上の、大きな区切り目をつけながら、激変に激変を重ねた。人心も、国外を 見ても、国内に目を転じても、大きく変わった。
  チェ・ゲバラを軸に時代を振り返ると、「社会革命」なり「社会主義革命」なりがキー概念になろうが、この時代の変貌の中で、「革命」もまた再審にかけられている。 ゲバラが語ったこと、行なったことのなかで、何が時代の試練に耐え得たか、何が耐え得なかったか。映画を観、時代を振り返りながら、そのことを、今を生きる私たち自身の問題として、考えてみたい。(太田昌国)

担当者から
ゲバラといえば、それはラテン・アメリカ革命の象徴的人物であり、同時にまた革命が一つの「国」にとどまることなく拡大されねばならないとした「国際主義」の本来の実践的求道者の相貌を悲劇性と共に帯びている。 だから、わたしたちはつい「ゲバラ」なる人物の強靭な「意志」と「潔癖性」に注目しがちだ。それはドゥルティにも共通するなにかしら「英雄伝説」のように見えてくる。ところが、『 チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記 を読み、商業映画ではあるけれども映像を見ることによってこの魅力的な人物が、本当はどれほど素朴な感性を源流に闘いに突き進んだのかを垣間見ることが出来る。「傷つき、悩み、苦しみ、絶望する等身大の人間」が、ハンセン氏病療養所で経験した当たり前の感覚は、彼のように闘いの激しいステージに立つことの出来ないどのような人間にも、闘うことの根拠を当たり前のこととして差し出しているような気がする。(松本)
TIME Schedule
PM1:00〜スペイン革命ドキュメンタリー『スペインの短い夏』 /PM2:00〜参考上映『モーターサイクル・ダイアリー』/PM4:00〜 ゲスト・トーク「ゲバラについて」 太田昌国さん/ PM5:00〜参考上映『チェ--人々のために--』/ 終了予定6時半
■8月4日(土) ■上映開始:PM1:00 終了予定:PM6:30ごろ
スペイン革命ドキュメンタリー『スペインの短い夏』 PM1:00〜
 原題を邦訳すれば「武装する人民」となるこの記録映像は、まさに内戦の真っ只中で撮影され、ひそかに国外に持ち出されて現像・編集されながら、フランコ体制下に長く陽の目を見なかった禁断のフイルム断片が75年にイタリアで発見されたのを機に、バルセロナ市街戦からアラゴン戦線へ、マドリッド防衛戦へと転戦していったドゥルティ旅団の戦闘を中心に、76年に復権したCNTが世界の同胞のために再編集した長編ドキュメンタリーである。77年秋にCNT代表が来日した折にもたらされた原版に基づき、当時のスペイン現代史研究会を中心に独自の立場で、邦題・音声・BGMを付して『希望と欺瞞の間に』とともに、日本語版が制作された。


参考上映『モーターサイクル・ダイアリー』 PM2:00〜
 のちに革命家としてその名を世界に轟かせることになるチェ・ゲバラが学生時代に行なった南米大陸縦断の旅を、彼が残した日記を基に映画化した青春ロード・ムービー。情熱的で正義心に溢れた青年が、親友と共に大自然を疾走し、様々な人々との出会いを通して人間的な成長を遂げる姿を活き活きと詩情豊かに綴る。主演は「天国の口、終りの楽園。」のガエル・ガルシア・ベルナル。監督は「セントラル・ステーション」のウォルター・サレス。なお本作でゲバラと旅を共にする友人アルベルト役を演じるロドリゴ・デ・ラ・セルナは、チェ・ゲバラとは“はとこ”の関係。
 1952年、アルゼンチンのブエノスアイレス。喘息持ちながら理想に燃え好奇心溢れる23歳の医学生エルネストは7歳年上の陽気な友人アルベルトと南米大陸探検の旅に出た。アルゼンチンからパタゴニアへ、そしてアンデス山脈を越えてチリの海岸線に沿って進み、最終的に南米大陸の北端ベネズエラのカラカスを目指す。アルベルト所有のおんぼろバイク“ポデローサ号”を移動手段に、わずかな所持金と貧弱な装備だけの彼らにとって、それはあまりにも無鉄砲な計画。当然のように彼らの行く手には様々な困難が待ち受けていたが…。(商業コピーです)


[トーク] PM4:00〜
太田昌国さんプロフィール

 北海道釧路市に生まれ,高校卒業まで過ごす。20代は,1960年代の世界的な政治・社会の激動の中で受けた衝撃の下に,世界史像と世界イメージを新たな視点で捉えるための作業に従事。 この間,『世界革命運動情報』〈レボルト社〉の編集・刊行に携わる。 1973年から76年にかけて,ヨーロッパによる「征服」の地であり1959年キューバ革命の影響もあって激動するラテンアメリカへ向かう。各地で生活・労働しながら,大陸部のかなりの部分を旅行する。 帰国後,ボリビア・ウカマウ映画集団の作品の自主上映運動を開始し,その後「シネマテーク・インディアス」を主宰して全作品の上映と2作品の共同製作を実現する。 1980年代半ばから,編集者として,人文科学書,とりわけ第三世界の歴史・思想・文学,世界と日本の民族問題,南北問題,植民地論・帝国主義論などに関連する書籍の企画・編集を多数手がける。 80年代初頭から自ら文章を書き始め,最初はラテンアメリカを軸として独自の第三世界論や帝国ー第三世界関係論を展開していたが,最近は日本の政治・社会・文化状況などを主なテーマに,書籍・雑誌・Web・講演会などで幅広く意見を発表し続けている。

参考上映『チェ 人々のために』 
 メキシコで亡命者カストロと出会った青年医師ゲバラはボリビアでゲリラとして政府軍と交戦中、捕らえられ処刑される。伝説の革命家チェ・ゲバラの短くも鮮烈な生涯と人間像をエネルギッシュフルに描く長編ドキュメンタリー。 本作は、革命の象徴として偶像化された英雄=チェ・ゲバラの生きざまを、膨大な価値ある写真や映像・エピソードを駆使しながら、親しみをもって描いていく。そして、彼の神話を超え、愛すべき人間的な実像を浮き彫りにしたゲバラ賛歌でもある。中でもシエラ・マエストラで共に闘った同士や、彼の娘アレイダら深い絆をもつ人々によって綴られるゲリラ戦での劇的な記憶や親父との家庭生活の思い出はゲバラの吐息を感じさせ、革命へ情熱に染まってゆく瞬間に宿った命が、今ここに、チェの真の姿となって甦る。 魅惑と混沌に包まれたキューバには、今なお、澄んだ目で見つめるベレー帽に髭もじゃの風貌の写真や肖像が街のいたる所に飾られ子ども達は声を揃えて「チェのようになりたい」と歌う。彼らの英雄に向ける愛と尊敬のまなざしに、チェの遺志が人々の心に永遠に生き続けていることを感じさせる。(作品資料より)
発売:アップリンク

--映像のバックに流れる’ブエノ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ’風音楽がとてもいい。(M)